カスティリョン・フィオレンティーノ訪問


 潜り込んで聴講している学部の「エトルリア学」の授業で、今日はアレッツォとコルトーナのあいだにある街、カスティリョン・フィオレンティーノの見学でした。この町を訪れるのは2回目。1回目は、私が所属しているマスターコースの授業でやはり遺跡と美術館を見学しに来ました。

 この街はトスカーナの典型的な街で、あたりの平野部を見下ろす小高い丘の上に中世の城壁とともにそびえています。でも典型的であるがゆえに、特にほかの街と違う見どころがあるわけでもなく、あまり観光客も訪れないため街の中心は静かな雰囲気を残しています。考古学的にも、これといって目新しいものは見つかっていませんでした。20年前までは。

 20年前、地元の考古学者や歴史愛好家がチームをつくって、街の一番の高台に位置する中世の城砦址の調査を開始しました。それまで、ローマ史においても、それ以前のエトルリア史においてもこの土地は特に目覚ましい発見があったわけではなく、ようやく中世に入って戦略的に重要な土地として認識されたと思われてきたこの街。ですが調査隊には、この土地はそれ以前のはるか古代から重要であり、なんらかの発見が見込めると考えたのです。
 彼らの推測の根拠となったのは、まさにその立地にありました。中世以来、カスティリョン・フィオレンティーノは北のアレッツォ、南のコルトーナの勢力圏のちょうど中間に位置し、それら二つの街を結ぶ街道筋に面しています。
 この街道はコルトーナから南には、内陸部のペルージャ方面か、西に迂回してローマ方面へ延びています。アレッツォから北へは、アペニン山脈を越えてボローニャ方面、または西に行ってフィレンツェへ。またこの街の東に延びる渓谷(Valtiberina)からアペニン山脈を越え東へ向かうと、アドリア海へ出ることができます。
 つまり、この街の高台にある城砦は、これらの交通を抑える重要な拠点だったのです。交通の拠点を抑えることはすなわち、その地域の経済と軍事を掌握することと同じです。それゆえこの街をめぐって、中世にアレッツォ-コルトーナ間で何度も戦いが起きていました。

 そして、これはイタリアのほぼ全域で、トスカーナ周辺では確実に言えることなのですが、中世の軍事・経済の拠点はほぼまちがいなくエトルリア時代(紀元前8〜1世紀)においても重要な拠点だったんです。戦乱に明け暮れたイタリアの中世の人々の地理感覚は、エトルリア人とほぼおなじだったようで、この事実は多くのトスカーナの街で考古学的に証明されています。

 こうして考古学グループが発掘をしたところ、城砦からエトルリア時代の住居祉、城門跡、さらに神殿とみられる遺構まで発見されました。次回へつづく

コピー屋さん、"コピステリア"

 日本の大学何かだと、研究棟や図書館にコピーカード対応のコピー機が置いてあって、学生、特に文系の学生なんかは希少本のコピーで一日コピー機にへばりつき、後ろに並んでる学生に「いい加減にしてください!」と言われても、「いやでもほらあと少しだから、ごめんね」なんて言ってはなんとか粘ったりするものだと思う。日本の私の出身大学の周辺にはコピー屋さんも何軒かあって、そちらのほうが構内より安かったりもしたのだけれど、ちょっと機械が古かったりするので考古学関係の図版入りのものをコピーするのにはちょっと向かなかった。そんなわけで5,000円分のコピーカードを買っては本の必要な部分を何冊もコピーし続けていました。
 最近はタダコピなんていうサービスもあるみたいですね。

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オーシャナイズ

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…私たちの頃にもあれば…、コピー貧乏になんてならなかったのに…(涙

 ではイタリアはどうか。大学内にもやっぱりコピー機はあって、やっぱりコピーカードを使い、その機械はメイド・イン・ジャパン製だったり。まぁ、知ってるイタリアの大学ってペルージャシエナ大学アレッツォキャンパス、フィレンツェ大学くらいですが、だいたいその3校では見た感じは日本と変わりません。
 ところが、このコピー機が使い物にならない。すぐ紙詰まりを起こす、かすれる…。そして減っていくカード額…。メンテナンスを毎日やってるはずなのに、終わったそばから詰まっていく…。メンテナンスの業者さんも、途中からいらいらしはじめて、何やら内部をガンガンたたく…。あ、あのー、私これでも日本でそういう仕事もしてましたんで、やりましょうか?と言ったりすると、にらまれたり。
 そんなわけで、日本とは逆にイタリアでは大学の前にあるコピー屋さんを使います。

 イタリア語でコピー屋さんは"copisteria"。"〜teria"とつくと、だいたいその前の言葉に関係するお店屋さんと言う意味にイタリアではなります。本(libro)を売るのはlibreria、ジェラート (gelato)を売るのはgelateriaと言うように。ちなみに学生課や事務所を"segreteria"と言いますが、別に秘密 (segreto)を売っているわけでも、美人秘書さん(segretaria)を売っているわけでもないのであしからず。
 ここでは、コピーした枚数分だけ自己申告で支払ったり、やっぱりカードだったり。そしてやっぱり紙詰まりが多かったりするのですけれど、まぁ大学内よりは頻度が少ないのでよし。料金はA4で5セントだったり、A3で12セントだったり。お店によって、サイズによっていろいろ。でもだいたい日本と同じかそれより高いぐらいですね。

 で、ここ数日私は、アレッツォの大学前にあるコピステリアに毎日通ってる。というのも、イタリア国内でもほぼ絶版状態の本をようやく大学図書館で見つけたのですが、そのページ総数729ページ。重さは5キロ以上はあるかと思われるお化けのような本で、それを貸借期間の一週間以内に必要な個所だけ何とかコピーしようと必死なんです。
 A4が680枚刷れるという、24ユーロ分のコピーカード買ったんですが、それでぎりぎり刷り終わるかどうかと言う分量。あぁ、3600円分があっという間に消えていく…。
 でもまぁ、いざ実際に買うとなると191ユーロもする本なんで、それを考えれば安いんですけどね…。

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 それにしても、本高すぎですイタリア…。

 タダコピ、イタリアでもやってくれないかなぁ…。あ、でもそんなことしたらますます紙詰まりが起きちゃうか…。

マメーリの讃歌

 イタリアの国歌は「マメーリの讃歌」とも呼ばれます。これは作詞家の名前からそう呼ばれているのですが、このマメーリはイタリア統一運動"リソルジメント"に参加していた経歴があるだけに、かなり祖国愛に満ちた歌詞になっています。いきなり古代ローマの名将、スキピオの名前が出てくるところにかなり誇りを感じます。

 すべての歌詞を参照するには、
マメーリの賛歌 - Wikipedia
が参考になります。

 意味を知りながら1番が歌えるようになるには、
http://aromazzi.hp.infoseek.co.jp/20010603.html
が勉強になります。

 肝心な音楽については、
イタリア国歌 歌詞・日本語訳・試聴
MIDIで聴くことができるので、実際に練習もできます。

 と言うわけで早速練習してたら、思いきり同居人に心配されました…。

ローマの遠足。

 昨日は、アレッツォの小学生のローマ遠足に同行してきました。私の教授が地元の子たちにローマの歴史を語る、と言う遠足だったのですけれど、それにイタリア人の学部生、私、そして私の友達でアレッツォに語学留学しているRちゃんが便乗。専門家にローマを案内してもらう機会なんて、めったにないですから。ここぞとばかりに行ってきました!
 共和国広場からスペイン広場まで、古代から現代までのローマの名所を徒歩でまわったのですが、私の今回最大の目的はイタリアの国会議事堂!!
 ヴェネツィア広場からコルソ通りを進んで左手に位置する国会。いつも物々しい警備がされていて、中なんて一生のぞけないだろうなと思っていたのですが、小学生に混じって見学できたんです!
 建物は15世紀に建てられたと言うイタリアの国会。非常によく手入れされていて、ふだんよく回る、美術館などに改装されて解放されているパラッツォ(館)と違って、なんだかぴかぴかで、活き活きとしている。人が使っている建物と言うのは、そうでない建物の何倍も美しいっていいますけど、ほんとうですね。
 そして、いざ審議中の国会へ!警備員のお姉さんに「絶対にしゃべっちゃダメ」と言われた子供たちが開けたドアの先には…。討論中に新聞を読む、携帯で話す、パソコンで何やら取引中etc...の議員さんたち…。誰も話を聞いていない…。書記官も手を休めて何やら雑談をしているようだったり…。日本の国会中継でよく取り上げられてる議員さんたちのだらしない姿なんて、かわいいものですね…。そのあと、子供たちに「おとなしくしなさい!」とは言えなくなりました…。
 その後もフォロ・ロマーノコロッセオと言った遺跡をぐるぐる回ったんですが、カンピドリオの丘の上、ローマの女神像の前では子供たちがイタリア国歌を歌いました。胸に手を当てて、誇らしげに歌う子供たち。周りの観光客のフラッシュが光る、光る。あぁ、かわいいなぁ、なんてちょっと思ったりしたのもつかの間、
「ねぇ!!日本の国歌歌ってよぉ!!」
えぇ!!?ここで?むりだよね、と、もうひとりの日本人Rちゃんにふろうとしたところ…、えぇ?もう歌ってる??

 で、私も、何年かぶりに君が代披露@カンピドリオの丘。恥ずかしくって目を伏せていたんですけど、終わりのころふと目をあげたら…、

なんで子供たちが歌ったときよりも人が集まってるの!!??

 日本語の響きが気に入ったのか、そのあとも子供たちは、やれ、どういう意味なんだあの歌は、とひっきりなしに聞いてくる。必死になってそれらにイタリア語で答えてきました。

 すっかり疲れきって、帰りの電車では眠るつもりが、ひょんなことから同行した大学生に武士道について語るはめになり、しかも他の乗客まで日本のアニメについて私たちに尋ねてきたり、とてもじゃないですが眠れませんでした。

 さらにさらに、帰り際引率の先生から、「来週の火曜以降、いつでもいいんで彼らの小学校に俳句を教えに来てほしい」、とお願いされちゃいました。疲れていたのもあって、よく考えもせずにうなずいちゃったんですけど、よく考えてみれば俳句なんて日本語でも無理!来週までにイタリア語の俳句の本を探さなきゃ…。

social capitalとイタリア

 ネットサーフをしていたら、IT関連記事でお名前をよく拝見する池田信夫さんが、イタリアについてご自身のブログでエントリーされているのを見つけた。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/cf4d74f80b211e21379a7c2daecf4d99

お仕事でローマに滞在されているようで、イタリアのsocial capitalについて書いてらっしゃった。的確なご指摘。
 ただこのままでは、「やっぱりイタリアって、こういういいかげんな国なのか」と言う意見がさらに増えそうなので、特に必要もないのだけれどちょっとイタリアを弁護してみよう。

 まず、テレコムイタリアのサーバがダウンしてネットに一日たってもつながらないと言うことでしたが、これは「テレコムイタリアだから」。テレコムイタリアとは、準国営の電話会社なのだけど、NTTのようなサービスの迅速さを求めるのは大きな間違いで、まさにイタリアの官僚主義を象徴する会社。このテレコムイタリア以外の、民間のインターネットプロバイダは、自由競争の原則で動いているのでほぼ日本並みに快適。とはいっても、ADSLの最大速度がようやく20MBが出始めた国なのではありますが。
 私が使っているのは、FASTWEBと言う会社の6MBのADSLサービス。日本では45MBのサービスにはいっていたので、ちょっと高めでも最新の20MBにしようと思ったのだけれど、申し込みをした5月の時点ではローマなどの大都市にしかサービスは提供されておらず、私の住むアレッツォは6MBが最大だった。
 でもその分、回線は安定している。電話局が遠いので、実質下り1MB出ているかと言ったところだけれど、朝晩で速度が変わることもない。ただ2ヵ月に1回ほど、朝起きて回線をつないでもADSLを認識しないことがあった。これはホストサーバの問題だったらしいが、24時間365日受付の電話サービスにその旨伝えたところ、1時間後には復帰していた。これは従来のイタリアにしては、驚異的なことだと思う。1時間でつながる!!しかも24時間電話受付サービス!!!
 そんなわけで、公営ではない、民間のサービスに関してはかなり信用できるレベルにあると思う。

 ホテルのモーニングコールがなかった、と言う件に関しては、もともとイタリアのホテルは多少ぼろくっても客はいくらでも来る、と言う意識で働いているので、準公営と思った方がいい。公のものにこの国で多くを求めてはいけない。

 「インフラが当てにならないので、同じ仕事をするにも日本の倍ぐらい手間がかかる」と言う点はだから、職種によるのでもないだろうか?あそこのあのサービスを使ってはダメ、という不文律が広く知れ渡っているので、その回避策もまたいくらでも見つけられると言うか。
 「他人が信用できないため、借金は家族や親戚からしかできず、大企業が成立しない」という部分は、ちょっと文の前半と後半で言ってることが変わっていて正直よくわからない。でも、私の同居人の22歳の友人の女の子は、銀行からの融資で今文房具店を開こうとしている。「企業」と言えるかといわれるとそうでないかもしれないけれど、ちゃんと投資とその回収という資本主義のシステムは、(少なくともここトスカーナでは)存在している。
 「賄賂や地下経済も蔓延しているが、裁判所が機能しない(ちょっとした裁判も10年ぐらいかかる)ので、だれも不正をただそうとしない」というところは、まさにその通りではあるのだけれど、池田さんも指摘されているとおりみんなそんな状況にもううんざりしてしまっていて、その結果プロディの左派政権が成立した。5年後どうなっているか、みんな期待している状態。

 とにかく、この国の人が笑って明るいのは、嘆いて暗くしていたらきりがないくらいの重い歴史と複雑な政治に、今現在も苦しんでいるからで。そしてそこから抜け出そうと、努力してもいる。
 そうした裏の面が、住んでみて半年以上たってようやくはっきり見えてきた。ある意味、経済と効率を追い求める今現在の日本とは比べ物にならないくらい、複雑な国だと思う。

「海外勤務者のための医療・衛生情報」ミラノ版

 海外勤務健康センターのサイトで、「現地在留邦人が推薦するイタリア・ミラノ医療機関・医師リスト(1993年版)」を見つけました。
 もう13年も前の情報ですが、何かの役に立つかもしれないのでとりあえずメモ。

http://www.johac.rofuku.go.jp/HP.LIST/Milano-Hp.html

アレッツォ、ジオストラ・デル・サラチーノ(馬上槍試合)結果速報。

 9月4日日曜日、イタリアはアレッツォで行われた伝統行事、ジオストラ・デル・サラチーノ(馬上槍試合)の結果速報。

 各地区のお披露目のあと、5時半過ぎに試合開始。4地区の実技順は、ポルタ・デル・フォーロ地区→ポルタ・クルチフェーラ地区→ポルタ・サントスピリト地区→ポルタ・サンタンドレア地区の順番。ちなみに私は当日券の立ち席で、見事にポルタ・デル・フォーロとポルタ・サントスピリトの狭間にいることに。もう試合開始前から罵り合いが凄かった。どんなののしりあいかというと、イタリアに住んでる人には「そんなものか」というものですが、直訳すると…、いえ、とてもじゃないですが訳せません。

 人形の的に点が書かれてあって、槍騎兵がついた場所の得点で競うこの競技。1〜5点の配分。
 1回目は各地区とも4点。微妙なムードが漂い始める。
 ポルタ・デル・フォーロが緊張の中、4点ゲット。そのころ押し出されてポルタ・デル・フォーロ地区住民の中にいた私も、ひどい目に巻き込まれなさそうなので安堵。
 その次のポルタ・クルチフェーラ地区が微妙にはずし、3点。
「クルチフェーラは街から出てけー!!」
コールで盛り上がるポルタ・デル・フォーロ住民たち。
 そしてプレッシャーの中、ポルタ・サントスピリトは…、

なんと的の真ん中、5点をゲット。

 一気に沈むポルタ・デル・フォーロ住民。帰る人も。

 これでポルタ・サンタンドレアが4点以下なら、ポルタ・サントスピリトの優勝。みんな静かに見守る…、わけなく、もう、ポルタ・サントスピリトの住民の歓喜がうるさくてしょうがない。地面に口付けして神に感謝する人、ブラバンで中立の立場のはずなのに、ついついうれしくなってはしゃいでころんで怪我して、救護班を呼ばれるおじさんも出る始末。

 そんななか、ポルタ・サンタンドレアが集中力を発揮できるはずもなく…、2点。

 とたんにもう我慢できないとばかり、競技場に柵を乗り越える人続出。ポルタ・サントスピリトの住民だけでなく、他地区の若者も一気になだれ込む。そしてそれを一切とめない警備の警官(笑)

 判定官が厳かに結果を伝え、ブラバンが音楽を鳴らしてる横を駆け回る子供と犬。

 もう、ぐちゃぐちゃ、って感じですが、おもしろかったです!!

 今晩一晩中、ポルタ・サントスピリトの住民は歓喜に酔いしれることでしょう。私も同居人とあとでまた街まで様子を見に行くつもりです。
 ではでは。