ムハンマド風刺漫画について欧州委員会委員長の声明

 はてなアンテナ経由で、世界中に影響が広がりつつある預言者風刺漫画について、2月15日付けで欧州委員会委員長が声明を行っているのを見つけました。


 昨年デンマークの日刊紙、ユランズ・ポステンに掲載されたイスラム預言者ムハンマドの風刺画から広がった波紋については、ジャーナリストの小林恭子さんがブログにまとめていらっしゃいます。

 イタリアにも多くのムスリムが住んでいるので、この件は遠い国の出来事と思うことはできません。毎日なにかしらチェックしてはいるのですが、どうも欧州・イスラム諸国の動向がともに各国別で報道されて、もっと大きな共同体としての動きがないように思います。それだけに5日前の声明ではありますが、EUという、国の枠を超えた共同体の代表がどういう位置を示すのか、興味深く読みました。

 感想としては、どうも各項目ごとにEUとしての建前と本音が見えてしまう気がしました。もしこれをイスラムの人たちが読んだら、ますます西洋との意識の乖離が膨らむと思うんですが、どうでしょう?

 デンマーク製品ボイコットや各国大使館襲撃といった問題が、論点からずれたものであるという指摘は正しいと思います。が、この欧州委員長の「言論の自由と宗教」に関する立場の表明は、あくまで欧州の立場です。欧州のような啓蒙主義以来の近代国家思想とはまったく別の歴史と法で国家形成を経てきているイスラム諸国に、西洋を受けいれさせようとしてるように思えてしまう。グローバル社会は西洋の思想が根底にある社会ですが、グローバルだからすべて正しいとは思えません。実際EU内のイタリアでも、オリンピックの聖火を妨害するといった反グローバルの活動があったりするぐらいなのですから。私たちの考えは広く受け入れられている。だからみんながみんな受け入れるべきだ、と非西洋には聞こえてしまうのではないでしょうか。
 慣習が国境を越えれば慣習ではなくなる。まさに「文明の衝突」の一端が表れている気がします。