イタリア、という女。

 「読んで旅する世界の歴史と文化 イタリア」を読みました。タイトルどおり歴史と、建築・美術・デザイン・文学・演劇・音楽・映画などが、要点を抑えて簡潔に書いてありました。
 昨年、語学留学していたときにイタリア文学や映画、音楽に関する授業が(当然イタリア語で)あって、それまで古代史にしか関心のなかったために試験前には大変な苦労をすることに。そうして学んだ事柄の重要な部分がこの本には余すところなく書かれていました。もっと早くに出会っていれば…。
 さらに、前半三分の一は著名な都市ごとの紹介が載っているのだけれど、実際に長いあいだその街とかかわっている人が書いているので、魅力あふれたガイド本としても使えます。とくにローマについての紹介は、実際に歩きつつ解説されているよう。コースが実にシンプルでありながら主要ポイントを抑えたものになっています。ガイドブックを見るとついついあれもこれもと欲張って、いつの間にかへとへとになってしまうものなので、これぐらいシンプルな方が街歩きには向いているかも。

 話は変わって、私は昨年からイタリア留学の準備をしているのですが、手続きがいっこうに進まず振り回され続けています。数々のお役所仕事に特有のルーズさ…。慣れてはいますが、さすがに最近はいらいらしたり。なんでここまでして私は行こうとするんだろう?
 そんな私と同じような嘆きの言葉を、この本の中で見つけました。

『ああ転落の女イタリア、苦しみの宿よ、荒れ狂う波間に舵取りを失った舟、もはや四海の女王ではなく、誰にでも身を任せる!』
ダンテ「神曲」煉獄篇

 1310年には成立していた「神曲」の煉獄篇。700年以上前から、イタリア人自身からも、悪女として見立てられ、嘆かれていた国。

 でも、悪女ほど魅力的なのも世の常。
 こんな私の心情を表す言葉もまた、みつけました。

『美しいイタリアよ、愛する岸辺よ
 それでもわたしは戻るのだ、あなたに会いに!』
ヴィンチェンツォ・モンティ「イタリア解放のために」1800年