エミール・ガレ、から考えた。


 今日も秋晴れ。家にいるのももったいなくて外へ。駅前のポスターで熱海のMOA美術館で「エミール・ガレ展」が催されているのを知り、思い切って行くことに。
 ガレは19世紀後半から20世紀初頭に活躍した、アール・ヌーヴォーの芸術家の一人。キノコの形をした、淡いオレンジの光を放つガラス灯が有名。現実は彼の制作はガラス灯だけではなく、食器に花器、陶磁器から木製家具まで幅広い。さらに芸術として作品を作っただけではなく、「製品」として大量生産、販売もした。今で言うところのIKEAとかALESSIと言えばいいかも。


 アール・ヌーヴォーの特徴は浮世絵などのシンプルな色彩と非対称のダイナミックな構図、そして昆虫や植物と言った自然に根ざしたデザイン。MOA美術館のおもしろいところは、今回の企画展の前室でジャポニズムの源流である北斎や広重の浮世絵や江戸時代の陶芸家、仁清のあでやかな陶器を見ることができる。私はまず前室をさらっと流してからガレに。そしてもう一度前室に戻ってそこにある作品を丹念に見た。あまり触れない日本美術だけれど、白紙に一滴朱を落としたような、控えめながらあでやかな日本の美も捨てたものではないですね。むしろ、これだけのミニマリズムを実践したデザインと言うのは、もっと現代で評価されてもいい。
 あと浮世絵のあの強烈な遠近法にあらためて驚く。近景と遠景を、極端な大小で示すあの遠近法と構図は、絵画と言うより写真的なものじゃないかと思う。現実に裸眼で見える世界ではなく、被写界深度を深くして撮った写真と似ている気がする。絵画だから現実と違うのは当たり前なのだけど、そのモノを表現する上での思想とデザインは似ているんじゃないか。
 そんなことを考えながら、帰り道ヘンリー・ムーアの銅像を撮影。